大山詣り②  新しい旅 番外編

大山阿夫利神社のホームページには御祭神の大山祇大神は木花開耶姫の「父君である」と説明されています。
江戸時代に流行した大山詣り、このころは神仏習合の時代で石尊大権現が祀られお詣りされていたようです。当時、大山の神様は「男神だから」、女神である江の島の弁天様をセットでお詣りする行程が人気を博したとのこと。
この時代からすでに大山の神様は男神ということで通っていたことがわかります。

それよりもっと前、記紀の中ではどうでしょうか。
古事記では大山津見神は男性の神様として書かれています。古事記の中で木花開耶姫の母親の記述はありません。
日本書紀の中ではどうでしょう。木花開耶姫の言葉として以下のように書かれています。

「妾是、天神娶大山祇神、所生兒也。」
私は天神(アマツカミ)が大山祇神を娶って生んだ子です。

「妾父大山祇神在。請、以垂問。」
父の大山祇神にお尋ねください。

「娶(めと)る」というのは女性に対して使われる言葉です。大山祇神は女性ととれる記述です。
ここでいう天神が誰を指しているのかも疑問です。
一方で「父の大山祇神」という言葉も使われています。「父の」と言っている時に木花開耶姫の母親についての記載はありません。

大山祇神の存在そのものについて疑問符が浮かんだのですが、それは私の感覚的な話になります。
今年の初めにもお参りした三嶋大社のことです。こちらの御祭神は大山祇命、積羽八重事代主神の二柱となっています。
私はいつもこちらでお話する神様は鯛を抱いている恵比須様のような男神様が一柱だけだったので事代主様と思っていました。(三嶋大社 新しい旅⑥)
三嶋大社に大山祇命という神様はいらっしゃったのか、ただ私がお話しできないだけなのか…。

さて、大山祇神を祭る神社として全国の山祇神社、三島神社の総本社である愛媛県今治市大三島の大山祇神社があります。
こちらの神社についてネットで検索していると、私にとっては衝撃的な一文を見つけました。

大山積神社の祭神は「大山積神∴(瀬織津比売命)」となり、
大山積神と瀬織津姫神は「∴」、つまり、「言い換え」を意味する記号で語られるとすれば、
両神は親近の関係にあるということになります。

ー「月の抒情、瀧の激情」より引用ー

もしかして大山祇命=瀬織津姫なのでは、という考えが浮かんできました。
そうだとすれば瀬織津姫の「娘です。」という言葉が当てはまります。(大山詣り①)

かつての王権の祭祀思想によって瀬織津姫が消去され、各地の神社の御祭神が変更されていく中で
瀬織津姫は大山祇神という仮面を被らざるを得ない状況になったのでは、と想像しました。
そう、これは私の想像でしかありません。

大山の神様がどんな存在なのか、それを私の「眼」で見に行けということなのか…。
それともこの状況を把握させるため、今回のように調べさせる事が目的なのか…。

とりあえず眺めの良いカフェでお茶して、お豆腐を食べようと、行ってみることにしたのでした。

大山詣り③につづく

今回、菊池展明氏のブログ「月の抒情、瀧の激情」から文章を引用させて頂きました。
正直、ここに文章を引用させて頂くのが憚られるほどすばらしい内容でした。
これがきっかけで著書「円空と瀬織津姫」を拝読しました。圧巻です。
今回のことで菊池氏のことを初めて知りましたが、同時に既に鬼籍に入っておられることを知りとても残念に思いました。
ブログ、書籍ともに現地を訪ね、古文書を読み解き丁寧に検証されたものです。私のようなスピ的要素はありません。
ご興味がある方は是非読んでみて下さい。

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